突然ですが。

このブログをご覧いただいている、あなたに質問です。

あなたは一世一代のお買い物、念願のマイホームを手に入れたとします。

そのマイホームの決め手は国際基準を満たす○○という素材を使用しているから。

「なるほど!それなら間違いないよね!」と、購入を決めたのでした。

ルンルン気分でマイホームに住み始めて半年後・・・

屋根が傾き始めて雨漏りがしてきた、柱が傾いてきた、床が傾いてビー玉が勢いよく転がる。

あなたはどうしますか?

増えているご結婚指輪の修理問合せ

10年ほど前からプラチナ製ご結婚指輪の修理に関するお問い合わせが増えてきています。

「結婚指輪が変形してしまったので直していただけますか?」

「結婚指輪がすごい傷付いているので磨いていただけますか?」

特に5年ほど前からは、そんなお問合せやご相談が増すばかり・・・

いざ、そのご結婚指輪を拝見させていただきますと

そのほとんどがPt950。

純プラチナが95%配合されているご結婚指輪です。

結婚指輪 プラチナ 後悔
「プラチナは丈夫で硬いって説明を受けたのですが・・・」

ご相談にお出掛けいただいた、ほとんどのお客様がおっしゃいます。

「プラチナって丈夫で硬いんですよね。金より安心だって。何か使い方が悪かったんですか?」

詳細は書けませんが、涙ながらに相談に来られたご夫婦も何組かいらっしゃいます。

購入されてから、さほど月日が経っていない状況をお聞きすると

そのお気持ちの痛みがよくわかります。

お客様は何も悪くないです。

純度100%の金とプラチナを比べますと、プラチナの方が硬いのですが

ジュエリーになるとプラチナの方が柔らかいのです。

さらに、純度が高いほど貴金属は柔らかいものなんです。

皆さまが購入されたご結婚指輪はPt950という柔らかいプラチナなのです。

プラチナという貴金属の純度
結婚指輪 プラチナ 後悔

貴金属は純度100%のまま使用できればそれに越したことはありませんが

純物は柔らかいため合金にして強度を高める必要があります。

純度が高ければ高いほど、柔らかい。

純度が低ければ低いほど、硬くなる。

国際基準ではプラチナジュエリーをPt950以上と定めていますが

ジュエリー発祥の地とされる欧州ではプラチナはあまり普及していません。

あっても鍛造法で作られたPt950のプラチナジュエリーです。

ジュエリーの製造方法

ジュエリー製造の原点は鍛造法です。

鍛造法とは、金やプラチナなどの貴金属そのままを加工していく製法です。

熱しては叩いてを繰り返して硬くしていきます。

アステリズムで生まれるジュエリーの9割はこの鍛造製法で作られています。

今の時代となっては、かなりアナログ的な製法と言えますが

いかなる文明の進化が訪れようともアステリズムは原点回帰がテーマですので

これからも大切にしていきたい製法です。

その鍛造法から、より低コストで量産向きに開発されたのが鋳造法です。

シルバーや、ワックス(蠟燭のロウのような物)で一度ジュエリーを作り、それを原型として型を取り

金やプラチナ、シルバーを流し込んで作る製法です。

今はCADで設計したり、画像をスキャンしたりして、3Dプリンターが作る樹脂の原型を経て

ジュエリーが作られるところまで進化しています。

鍛造法のメリット:非常に硬いジュエリーが製作できる。

鍛造法のデメリット:コストがかかる、高単価。

鋳造法のメリット:低コストで量産できる。

鋳造法のデメリット:鍛造法と比較して柔らかい。

Pt950の普及の動き

スイス、ドイツでは量産向きではなかった鍛造法で量産できる設備を整えてきました。

よって、柔らかくて愛用できないと言われてきたPt950でも

鍛造法で硬いプラチナとして多くの方々に提供できるようになったのです。

そして、そんな欧州ブライダルブランドの支持が日本国内で広がっていきました。

さらに、日本国内でも少数ですが、欧州ブランドのような量産可能な鍛造法ブランドも出現してきました。

これにより、プラチナと言えばPt900という認識だった日本でも

Pt950の存在が広まっていったのです。

そして、鋳造メーカーはハードプラチナ950を開発します。

ハードプラチナは純度95%のプラチナにパラジウムとルテニウムを配合した合金です。

(過去にイリジウムも配合されたハードプラチナの加工も経験しました)

鍛造法で作られた強度に対抗して、材料自体の強度を上げるという発想です。

そのような動きに合わせて、数十年ほど前から

『プラチナは国際基準ではPt950以上と定められています』

と、明言されることも増え

婚約指輪、結婚指輪ではPt950の普及が進んでいます。

(日本での基準はPt850以上と定められています)

ジュエリーを製作する立場からの見解

ハードプラチナのPt950は同じ鋳造法で作られたPt900と比べると安心できる強度だと感じていますが

ただ、材料自体を強化しても、やはり鍛造法には敵っていないというのが作り手の立場としての正直な感想です。

Pt950を選択するのであれば鍛造法で作られたもの、最低でもハードプラチナをお選びください。

アステリズムでは基本、鍛造法のPt900でご提供しております。

国際基準を満たしている素材というのはとても素晴らしいと思うのですが

今後の人生で、それを証明する機会は訪れるのでしょうか?

ワタシ個人は、国際基準に捉われずに傷つきにくい、変形しにくい素材を選びます。

※金属アレルギーのお話

金属アレルギーの起こしやすさは、パラジウム>プラチナ>金の順になります。

パラジウムに反応される方においてはPt950の方が良いと思います。

金属アレルギーについて心配の方は、必ず病院で診察をお受けになってください。

我々は貴金属を扱うプロですが、金属アレルギーの判断は下せません。

まとめ

ここ最近はゴールドのご結婚指輪も人気ですが、日本ではまだまだプラチナの需要が多いです。

あなたがお選びになったプラチナで後悔はしてほしくありません。

・ゴールドよりもプラチナの結婚指輪の方が強度は低いです。

・貴金属は数字が大きいほど純度が高く、柔らかい。

・国際基準を優先しますか?ダメージが少ないことを優先しますか?

・鋳造法より鍛造法で作られた指輪の方が強度は安心。

・Pt950をお選びになるなら鍛造法を。鋳造法ならハードプラチナを。

純度と製造法との強度比較。

鍛造法のPt900>鍛造法のPt950>鋳造法のPt900>鋳造法のハードプラチナPt950>鋳造法のPt950

後悔しないプラチナのご結婚指輪をお選びくださいね。

今日はこの辺で。